映画■最後の語り部たち■吉祥寺・アップリンク



前日のチベット・カラーチャクラの会から
興味を持って21日の朝、映画■最後の語り部たち■
上映中の吉祥寺アップリンクへ。

標高4000mを超える草原、チベットの民族服で
叙事詩を詠う若者の声がラップ音楽のように
リズミカルに聴こえてきます。

大自然の草原をヤクを連れた文盲の若き牧童が
神授(神から授けられたという)で天啓を受けたように
語りだすケサル大王伝。

千年続いてきたこの語り部も
存続が危ぶまれ、中国政府の
開発がチベット高原を変容させています。

そんな危機のなか、いまこの語り部の存在を
美しい自然と共に映画に残すことの意義は大きく
長年にわたる取材や撮影、この映画にかけた
大谷寿一監督の情熱に感謝。

25日までの予定だった吉祥寺での上映が
1週間延長になったと、監督からのgood newsが届く。
多くの人に観ていただきたい作品。

21日の上映後、この映画の中で流れている
音楽「遊牧民の歌」を担当された
テンジンクンサンさんのライブ演奏もあり
ゆたかな時間。

画像
画像


映画■最後の語り部たち■吉祥寺・アップリンク

監督・撮影・構成・編集:大谷寿一

公式サイト
https://www.gesar-teller.com/

『最後の語り部たち』紹介
ケサル大王伝は世界でも稀な未だに語り部が存在している叙事詩です。
しかも文盲の牧童が、夢の中にケサルが現れて目が覚めると語りを
滔々と語り出す、いわば神授型という謎めいた語り部たちです。
チベット全土でわずか20名ほどしか残っていないと言われます。

青海省省都西寧から寝台バスで26時間、標高4300Mのチベット・カム
の町冶多(ジトゥ)で語り部たちに会いました。彼らのはまるで無意識のまま、取り憑かれたように圧倒的な語りを大草原で語ってくれた。
なぜ語り部になったのか。夢の中にケサルや山神が降りてきて「ケサル語り」を命じたといいます。それぞれのエピソードが語られます。^
語り部たちはカム語というチベットの方言を使い、また古語もあり、カム
の若い人でももう理解ができないといいます。最初の語り部取材から4年かけてようやく日本語の翻訳にすることができました。

次の舞台は青海省ジェクンド(玉樹)、2010年大震災を被った町です。
富士山頂に匹敵する標高の町は震災後、驚くべき変貌を遂げ、ケサル像の
地下にケサル博物館をオープン、第一回ケサル大会が開催され、ケサルを
観光客誘致のために売り込んでいます。
地元党政府は語り部の個人芸よりも集団で華のある劇や舞踏、さらに映画
やアニメに関心を注ぎ、語り部たちが疎外されていく現実を捉えました。

隔絶されていた美しいチベット高原も中国政府の大規模開発によって急激に変貌が進み、牧畜民は半ば強制的に町へ下ろされ(生態移民)、ケサル文化の基盤が解体されています。環境汚染から清明な空気は損なわれ、「もうケサルは(夢の中に)降りて来ない、神授型語り部はもう誕生しない」と言われます。

取材中に、辺境の地に通称ケサル寺(達納寺)があり、遺物が残され、ケサルと将軍たちを奉った仏塔がある事を知らされました。ケサルが実在した証しだといいます。
冬の取材で標高4400mの、険しい岩山に囲まれた寺に向かい、千年前、ケサルの国から運ばれ、文化大革命から逃れたというケサルゆかりの仏典、武具などと対面、さらに高い岩壁の祠の中に仏塔群を遠く見る事ができました。果たしてケサルは実在したのでしょうか。朝陽の当たる仏塔のある岩山を見ていたら修行中のケサルもこの光景を毎朝見ていたという感覚が湧き出てきました。

夏には寺で第一回ケサル研究会が開催され、語り部や研究者が辺鄙な寺の麓に一堂に会しました。党や地方政府の意向とは関係のない純粋にケサルを愛する者たちの集会でした。彼らはケサルの実在を信じる人々でもありました。語り部たちは仲間の前で声を張り上げ謡ったのです。

イーリアスやマハーバーラタが本になり、語り部が消えたように今、ケサル大王伝も50巻の「定本」が完成しました。ケサルの語り部も最後になるのでしょうか。




画像


画像



上映後のトークゲストこの映画の挿入歌「遊牧民の歌」演奏者の
テンジンクサンさんと大谷監督とのチベットの話
その後、横笛と歌の披露もあって充実したとき。

画像
チベット自治区だけではないチベットのことなど・・・
祖父母がチベットから難民としてインドに亡命しインドで生まれたテンジンクサンさん。
今は日本に住みチベットへの郷愁も漂わせる音楽制作をしています。
監督の「チベットに行きたいですか~」の質問に
「行きたいけれど入国はできないだろう…」との現実。

画像


★大谷寿一監督
海外紀行番組TBS「地球浪漫」「新世界紀行」「神々の詩」「世界遺産」NHK「ハイビジョンスペシャル}などで大地に生きる人々を焦点にアフリカ、南米、アジアを取材。報道番組TBS「報道特集」「ニュース23」TX「ナビゲーター」。ケサル大王シリーズ『ケサル大王』(2011)『天空の大巡礼を行く』(2014)。







この記事へのコメント

2019年04月26日 16:04
大王伝説の叙事詩を、今でも
語り謳うチベット高原の語り部たち。
そう聞いただけで、空想の翼が
大きく広がるような気がしました。
日本の古代にも、恐らくは、
記紀神話の原形となるような物語を伝える
語り部たちが存在したんでしょうが、
今となっては、その面影を辿る事は出来ません。
現代に残る語り部たちの記録映像とは、
何て貴重な映画なんだろうかと思いました。
komichi
2019年04月26日 17:50
yasuhikoさん、こんばんは!
標高の高い大自然の中で育まれた語り部の姿が強烈な印象を受けました。強い風吹く中、走るように語る語り部の神の使者のような眼差しにも圧倒された映画です。
きっともうこの先は観光や資源採掘などで自然も薄れて行きそうな状況のなか、神授をうけた語り部はいなくなってしまう気がしました。
その記録を残しておくことは、とても大切なことと思っています。
大手の映画会社からの応援を得られず、何度も観光ヴィザで通って撮影を続けた監督の意思に感銘しました。
2019年04月26日 20:13
 初めまして、チベットについては少し以前から興味を持っています。数年前にチベット仏教の砂で描かれた曼荼羅等の特集をテレビで見た事が有ります。動画の中では、現在も五体投地を行う方がおられるのですね。語り部達については、どこか日本のアイヌ文化にも通じるところが有るように思えます。日本の場合はやっと先住民族として認知され始めたばかりのようですが、チベットの場合はどうなんでしょうね?ある意味で、中国の政策は、漢民族に依る支配的な意味合いが強いだけに、チベット民族の民族性の保持と言う点に関しては、とても難しいかもしれませんね。
 単に文化としても、次の世代に引き継がれてゆく事を、努力して貰いたいものだと思います。
komichi
2019年04月26日 22:01
藍上雄さん、こんばんは!
チベットはヨガをするようになってからインドに行ったりして、チベットで作られたシンギングボウルを持つようになったり…少しずつ近くなってきました。
世界中に語り部はいたようですが、自然環境や生活が変化したことで今ではチベットの語り部が最後になっているのかもしれません。
以前アラスカのイヌイットやネイティブアメリカンの居留地近くに仕事で行くことがありましたが、皆することもなく昼間からお酒を飲んでいて、居留地政策で本来の生活習慣を守れなくなってしまった結果のようでした。
チベットの遊牧民も中国政府の政策でどんどん自然から離れた暮らしになっているようで、変化しているようですね。
2019年04月28日 17:33
文字を持つ事によって失った語り継ぐ文化。
それは佳かった事なのか悪い事だったのか。
書いた物が一番正しいものだと思ってしまうから、語り部が語っても伝える事が出来なくなった一面もあるかもしれません。
チベットの文化をためらいなく破壊する中国政府はひどいと思いつつ、それらは他国だけでなく我が国も長い歴史の中でしてきたんだと思うと恥ずかしい。
どォにかして チベット民族が本来の生活が出来る様にならないか。
この件の事はあまり詳しくはないですけれど、平和裡に事が進んでほしいと思ってます。
komichi
2019年04月28日 22:12
おーちゃんさん、こんばんは!
チベットで語り部がいま存在することすら奇跡に近いことなのかもしれませんけど、50巻もの「定本」が出来たということは、もうこれから先語り部は新たに出てこないのかもしれませんね。
チベットは自然と共に生き、非暴力思想の地ですから、力でやってくる中国政府になすすべはないのかもしれませんが、文化をしっかり残してほしいと、勝手に願っています。

この記事へのトラックバック